三谷幸喜監督の映画「ラヂオの時間」あらすじ紹介。ネタバレ・感想も!

こちらの記事は三谷幸喜さんが監督をした、初めての映画作品「ラヂオの時間」についてのレビューです。
あらすじや感想の他に、ネタバレやちょっと裏話もあります
映画データ
【監督・脚本】三谷幸喜
【出演】西村雅彦、唐沢寿明、鈴木京香、戸田恵子、井上順、細川俊之、小野武彦、並樹史朗、近藤芳正、モロ師岡、梶原善、奥貫薫
【主題歌】「no problem」堀ノ内修司(布施明)
【音楽】服部隆之
【時間】103分
あらすじ
作家志望の主婦・鈴木みやこは、初めて書いたラジオドラマの脚本が採用され、ラジオ局のスタジオで放送現場に立ち会っていました。
リハーサル中は、自分の作品を役者が演じている姿を目の当たりにして高揚していたみやこ。
ところが主役を演じる女優のわがままを皮切りに、みやこの脚本はどんどん変えられていきます。
一人の役者がわがままを通せば、別の役者もわがままを言い、辻褄合わせのために別のところに手を入れて、元の部分がないほどに変わっていってしまいます。
ネタバレ
番組の責任者であるプロデューサー・牛島、編成部長・堀ノ内は千本のっこを始めとした役者陣やスポンサーのご機嫌を取ることしか考えていないよう。
最初は「ラジオには無限の可能性がある」と、いいことを言っていた牛島が、後半、脚本通りにやってほしいと頭を下げるみやこに対し「だめだ」と冷たく言い放ちます。
あまりにも手を入れられ過ぎて、もはや自分の作品ではない、これ以上変えるなら自分の名前は出さないでほしいとスタジオ内に立てこもったみやこの願いも虚しく、生放送は進行していきます。
ディレクターの工藤は、脚本家の書いたものをそのまま作るのが自分たちの仕事だと牛島に反発しますが、とにかく放送を続けようとする牛島は工藤を現場から外してしまいます。
諦めた様子で放送が進むのを見守るみやこ。
担当を外された工藤は、スタジオ内の役者たちと直接連絡を取るべく調整室へ走ります。
工藤は牛島に気付かれないよう、外部からキャストに指示を出し、みやこの脚本通りのラストシーンへ持って行きます。
役者たちの協力もあり、ドラマはなんとかハッピーエンド、そして映画も大団円を迎えます。
私的な指摘
個人的にかなり笑わせていただきました(笑)
みやこの脚本がどんどん変わっていくところ
創作した人からしてみれば、自分の作品が勝手に変えられ、手放したい気持ちと手放したくない気持ちで葛藤しているはず…というところに感情移入してしまいました。
生放送・役者が動かないと始まらない現場で、制作側が右往左往する様子
困ってるのは分かるんだけど「え?そこそうしちゃうの!?」という変更が次から次に出て来ます。もう無茶過ぎて笑うしかない(笑)
実際の現場は知らないけど、なんかリアルっぽい
きっと業界の人たちは日々こんなドタバタの繰り返しなんでしょうね。臨機応変にやらないと回らないんだろうなーと。
ラストはスッキリ
目の前のことにその場その場で対応していくので、その時その時に我慢したり妥協したりしている人がいるはず。本当ならもっと遺恨が残りそうな物語ですが「終わり良ければ全て良し」というラストでスッキリ終われました。
現実的じゃないかもしれないけど、後味良かったです。
職人魂のキャラクターがGood!
元音響マンの守衛さん(藤村俊二さん)、ディレクターさん(唐沢寿明さん)に職人魂を感じました!
登場人物の中でもすごく好きなキャラクターでした♡
実際これ放送したら、視聴者はチャンネル変えるかも…
現場の人の心情にはリアルさを感じつつ、とにかく行き当たりばったりに対応を変えるせいで、CMを引き伸ばしたり、テーマ曲を何度も流したりしているのです。
映画の中では視聴者代表トラックの運ちゃん(渡辺謙)が気の長い人で、最後まで聴いてくれていましたが、この通りに実際ラジオで放送してたら、私だったら最後まで聴かないな~と思いました。
ちょっと裏話
「ラヂオの時間」はもともと舞台用の脚本でした。
三谷幸喜さんがテレビドラマ「振り返れば奴がいる」の脚本を書いた際、ドラマの撮影現場や役者さんの都合で脚本が変えられていった経験をもとに書かれた作品です。
創作をする方ですから、当然自分の作品に勝手に手を入れられるなんて面白くないわけですよね。
ドラマ制作当時はかなり苦しまれたようです。
ですが実は「ラヂオの時間」は、テレビ制作側への批判ではなく、自分自身への戒めを含んでいるそうです。
映画の中で、自分の書いた脚本がどんどん書き換えられていくことにショックを受けた主婦がスタジオに立てこもり、
「私の名前を呼ぶのやめて下さい。私の脚本(ほん)じゃないって言って下さい」
と涙ながらに訴えるシーンがあります。
これは、当時の三谷さんの心の声ですね。
実際に何度も「名前を出さないで下さい」と言っていたそうです。
それに対し、プロデューサーが語りかけるセリフ。
なにもあんただけじゃない。
私だって名前を外してほしいと思うことはある
しかしそうしないのは私には責任があるからです。
どんなにひどい番組でも作ったのは私だ。
そっから逃げることはできない。
満足いくもんなんてそう作れるもんじゃない。
妥協して、妥協して、自分を殺して作品をつくりあげるんです
でも、いいですか。
我々は信じてる。
いつかはそれでも満足いくものができるはずだ
その作品に関わった全ての人と、それを聴いた全ての人が満足できるものが。
ただ、今回はそうじゃなかった。それだけのことです。
悪いが名前は読み上げますよ。
なぜならこれはあんたの作品だからだ。まぎれもない。
三谷さんはこのセリフについて、当時のご自身への思いだったかもしれないと語っています。
(「三谷幸喜創作を語る」(講談社)より)
おまけ
ここまで読んで下さったあなたへ。
この作品、大物俳優さんがチョイ役で登場しています!
清掃係のおばちゃんに宮本信子さん
ラジオを聴いているトラック運転手に渡辺謙さん
ラジオ番組のパーソナリティに桃井かおりさん
桃井さんの番組のディレクターに佐藤B作さん
主調整室係に市川染五郎さん
そしてエンディングソングは布施明さん。
ステキな美声で「千本のっこが笑っていれば~」と歌ってます(笑)
歌詞は三谷幸喜さんが書かれてます。
映画中での千本のっこの存在感と合わせてお楽しみ下さい!
最後まで読んで下さってありがとうございました!