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「つゆかせぎ」ネタバレあらすじ

      2016/09/09

※直木賞受賞作「つまをめとらば」収録の、他の短編はこちらから

茶屋

出典:写真素材足成

主人公の妻・七場所(簡単に言うとホスト街)を舞台にした戯作(小説)を書いていたと知ったのは、朋が心臓の病で亡くなった直後でした。
朋に原稿を依頼していたという地本問屋(出版社)の番頭は、朋の死を知らずに原稿を受け取りに来たのでした。
朋はかなり人気の作家だったと言う番頭に頼まれ、主人公は原稿を探してみますが、自宅以外の場所で書いていたらしく見つかりません。
華やかな芸能界に慣れ親しんだ芝居茶屋(芝居小屋付きの料理屋)の娘であった朋のことなので、かなりきわどい描写も書いていたかもしれないなどと想像をめぐらせますが、読んでみる勇気はありませんでした。

主人公のは、年貢の交渉で上役と農民との板挟みに耐えきれず国を出た人でした。
俳諧だけを趣味とし、大人しく、目立たぬように生きてきた人であり、主人公もまたその生き方に倣ってきました。

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その地味な主人公が、朋という美しく華やかな茶屋の娘をめとることになったきっかけもまた、俳諧でした。
父の見まねで始めた俳諧が面白く、師匠について会へ入ったところ、朋が主人公を見初めたのでした。
女性になど近づかないようにしていた主人公が、勤め先である旗本の屋敷に行儀見習に来ていた朋のご指名を受けて俳句の先生役をしたのですが、それすべて朋の作戦だったというわけでした。

朋は主人公に俳諧の才能を見ていました。
いずれ俳諧で身を立てるのでしょう、と主人公に言うのですが、主人公には全くその気はありません。
国を出た父親のこと、専業で俳諧をする小林一茶の話などを持ち出す朋でしたが、主人公は自ら動こうとはしません。
冒険などしない、夢も持たない、そんな己を見ていたから、朋は自ら筆をとって小説など書き始めたのかもしれない、と主人公は考えます。

その年は冷害で稲に病気が多く出た年でした。
領地の管理運営が仕事の主人公は、年貢米の出来を確認するための出張をします。
農民にしてみれば不作なので年貢を減免してほしいわけですが「大変だね、じゃあ減らそう」というわけには行きません
こちらも曲げず、むこうも曲げずで押し合いへし合いする中で、お互い疲れてなんとなく落ち着くところに落ち着くのを待つ、というやりとりを行うことになります。
毎度のことと分かってはいても、げんなりする主人公。

柿

出典:写真素材足成

出張先は柿や栗の無人販売があり、売れた分の銭がカゴに入れて置かれていても、誰も盗ったりしないようなのんびりした村です。
定宿には俳諧好きの主人がおり、主人公はいつもならこの主人が催してくれる句会を楽しみにしています。
しかしこの年は、妻が亡くなったためもあってか、いつもの御役目に想像以上の疲労を感じます。

雨の中、早々と床についた主人公に、宿の主人が女はいかがか、と声をかけます。
売春の斡旋などしない宿だったので、驚いた主人公が事情を聞くと、日銭稼ぎの夫婦ものが雨で仕事ができないとき、妻に稼がせることを「つゆかせぎ」と言うのだと説明します。
今夜の女は、亭主が死に、一人で2人の子を育てているという女で、最初はかたく断ったが、どうしてもと手をついて頼まれるので、ごくたまに、よくよく客を選んで紹介しているのだと言います。

雨

出典:写真素材足成

主人公は、食いつめて身を売る女と、それとなく手を差し伸べる主人に興味がわき、その夜、銀を買うと申し出ます。

銀は貧しい生活をしている割に健康的でおおらかな女性で、食いつめているはずなのに、子供はかわいい、もう一人ほしいと言って主人公に身を預けます。
誰の子か分からない子を身ごもるかもしれないが良いのかと問いかける主人公に対し、「子は女のものです、男親は誰でもかまわない」と言う銀。その言葉と大きさに圧倒される主人公。
銀とその子と床を並べて眠りながら、干し藁のような匂いを感じ温かい気持ちになるのでした。

やがて再び村を訪れた主人公は、銀が身ごもり、定宿の主人がその身を気遣って宿で軽い仕事をさせていることを知ります。
主人公は、人情にあふれるあたたかい光景を見て、自分がとても狭い世界にいたことを思い知ります。
銀の体をいたわる言葉をかけながら、妻・朋が書き残した小説を読んでみようと思う主人公でした。

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【感想】
父の背中を見て、目立たぬようひっそりと生きてきた主人公ですが、唯一の趣味である俳諧でだけ、そっと感情を表現していました。
働き詰めに働いて、唯一の趣味がこれ!という人、いますよね。

かたや奥さんの朋はかなり自由な人で、江戸時代の女性としては言葉遣いも夫と対等です。
行儀見習に入った旗本のお屋敷で、手代(主人代理・執事みたいな感じでしょうか)に逆ナンパを仕掛けるという、この時代なら女傑といってもいいようなすごい女性でした。

主人公に春を売りに来たは、子供をとても愛していて、母の大きさを感じさせる女性でした。
自分もこんなおおらかな女性でいたいと思います。
銀の娘たちもきっと、朗らかで男をほっとさせる女性になることでしょうね。

作者は作中で、女は理由なく自信を持っていると言っています。
男性は理由がないと自信を持つことができないけど、女性はとりわけ何かに秀でているというようなことがなくても自信満々だから、かなわないというのです。
これは…作者の青山文平さんの心の声なんでしょうか(笑)

手

出典:写真素材足成

※直木賞受賞作「つまをめとらば」収録の、他の短編はこちらから

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最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

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