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君の名は。小説Another side Earth boundのネタバレ感想

      2016/10/07

映画「君の名は。」のサイドストーリーが読める、小説「君の名は。Another side:Earth bound」には、物語を瀧ほか3人のキャラクターの視点で描いた4つの短編が収められています。

読めばもう一度映画が見たくなる、この小説作品の内容と感想をご紹介します。

※映画本編のネタバレを含みます。まだ観ていない、これから観るという方はご注意下さい。

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君の名は。Another side:Earth bound

KADOKAWAより2016年8月1日に出版された文庫です。

原作は「君の名は。」監督の新海誠さん、文章は映画にシナリオ協力としても参加された加納新太(かのう・あらた)さんによるものです。

著者が新海誠さんでないことから、公式なのか?との疑問もありますが、加納新太さんは制作にも参加されており、公式のサイドストーリーといってよいでしょう。

加納新太さんはこれまでにも以下のように新海誠さんの映画作品のノベライズを手がけています。

作品内容は、三葉と瀧が入れ替わりを繰り返していた時期に、瀧、三葉の友人・テッシーこと勅使河原克彦、三葉の妹の四葉、そして三葉の父の4人の視点で描かれています。

映画を観た方であれば
「あの場面のとき、この人物はこんなこと考えてたのか…」
「えっ、あのときって実はそうだったの」
など、新たな発見があったり、物語の世界が深まったりすることと思います。

まだ観ていないという方は、できれば映画か、新海誠さんご自身の手による小説を読まれた上で読むと、物語がわかりやすいのではないかと思います。

目次とあらすじ

第一話 ブラジャーに関する一考察

映画の中ではRADWIMPSの「前前前世」に乗って流れるように過ぎていった数々のシーンでしたが、瀧が三葉との入れ替わり中にいろいろ苦労(!?)してたというお話です。

最初こそ入れ替わるたびに、緊張し不安にもなった瀧でしたが、「三葉の体を操縦」する感覚を掴むうちに糸守町の生活もそれなりに楽しむようになっていきます。

一方で、神社の跡取りであり、巫女であり、町長の娘である三葉という女子高生が町の人々に見せている一面を知ることにもなります。

こいつはいったいどういう人間なんだ?

瀧は次第に三葉という人間に興味を抱くようになります。

※このお話は現在KADOKAWAカクヨムにて公開されています。

第二話 スクラップ・アンド・ビルド

三葉の幼馴染であり、よき友人、テッシーこと勅使河原克彦くんを描いた物語です。

父親は地元の土建屋の社長で、糸守町の建物の八割方はこの「勅使河原建設」が建てています。
テッシーは、がっちりと地元に根を下ろす会社の跡取り息子というわけです。

テッシーの父はまた、三葉の父である町長の宮水俊樹の後援会長でもあって、ほぼ現職当選確実という選挙の応援活動をしています。

高校生男子ならば父への反発も、反抗期もあってよいお年頃だと思いますが、テッシーは父の会社で働く従業員だとか、町長との繋がりがないと会社が困るとか、そういうこともちゃんと理解したうえで、三葉とはまた違った葛藤を抱えています。

第三話 アースバウンド

映画の中でもしっかりものの妹だった四葉視点の物語です。

毎朝姉の部屋を覗いては、眉根を寄せつつ三葉(=瀧)の奇行に悩む小学生の四葉は、実は三葉のことをとても好いていて、心配もしているのです。

四葉もまた巫女として宮水神社の神事を継ぐ立場にあるのですが、小学生だからなのか、元来の性分なのか、かなり自然体でのびのびとしています。

人が変わったようになった(実際変わっている)三葉を見ては、何か悩みがあるのか、ストレスじゃないかと心配し、三葉の代わりに婿をとって神社を継ぐからと言ってみたり、健気な四葉に惚れ直すかも。

第四話 あなたが結んだもの

最終話は三葉の父・宮水俊樹視点の物語です。

他3話は、三葉と瀧が入れ替わりを繰り返す、比較的平和というか、まだ笑えている場面なのですが、この最終話だけは彗星が落ちるその直前の緊迫した時間から始まります。

宮水俊樹という人が民俗学者であった頃、三葉たちの母である二葉と出会い、その不思議な力とそれを崇める町の人々の様を目の当たりにし、平凡な幸せを断ち切られた物語が語られます。

映画では高圧的で頑なな人物のように描かれていた宮水俊樹の過去と、信じがたい三葉の言葉を飲み込むまでの心の動きが垣間見えます。

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ネタバレと感想

内容としてはほぼ映画のままで、視点を変えて見ている物語です。
映画では見えていなかった設定や描写がありました。

第一話

いつもの三葉は「きちんとしていなくてはならない」という自分を縛り、ひたすら目立たないように生活しているようですが、瀧はそんなのお構いなし。
三葉の体でダンスを踊ったり、バスケで大活躍したり、陰口を叩くクラスメイトにはっきりと文句を言ったり。

奔放な三葉の姿を見て、これまで声をかけづらそうだった下級生や、遠巻きに見ていた男子など、三葉の周囲の人々が少しずつ変わり始めます。

鏡に映る三葉の顔を見つめる瀧は、その思いつめたような表情の内にある想いをはかりかね「お前はいったいどういうやつなんだ」と問いながら、三葉に対する強い興味が湧いてくるのでした。

第二話

神社の巫女である三葉はその肩の荷の重さからサヤちんに「糸守を出る」と愚痴ります。

テッシーは、父の会社と町長の癒着やら、時間が止まったような町やらにもやもやとしたものは抱えるものの、糸守の町のことを愛しているので、三葉とサヤちんの会話をじっと聞いているのもかなり辛かった様子。

町のことは愛しているが、父のこと、自分の将来のことを考えると、町全部を壊して作り直したいなどと考えることもあるのでした。

悩み多きテッシーではありますが、父の会社の従業員とはそれなりに良い人間関係を作っています。
ないものは作るの精神(?)で、従業員たちの力も借りて、バス停にオープンカフェ(!)を手作りしてしまいました。
なかなか頼もしいのです。

三葉の立場を思いやり、瀧が入り込んだ際の奇行を生暖かい眼差しで見守りながらも、しんから女性を信頼することはできないと考えていたテッシー。
幼馴染だけど、友達だけど、三葉やサヤちんとは、どうしたって超えられない壁があると思っていたのですが。

瀧in三葉がふと漏らした、糸守の風景の美しさ、「ここにはなんでもある」という言葉を聞いて、その壁がなくなるのを感じるのでした。
たぶん本能的に三葉の中の瀧を察知したんだろうなあ。

映画の終盤で、三葉の姿の瀧が町人の避難に協力してくれと言ったとき、テッシーがすんなり納得した根拠はここかなと思いました。

第三話

四葉の秘密がばらされます。

一つは、口噛み酒が本当に酒になるのか、飲んでみたこと。
巫女が作った口噛み酒は、枡に入れられ紙をかぶせられ、組紐で括られているのですが、作るときにそれらを封印したのは巫女自身なので、三葉と四葉には解くことも結び直すことも可能なのです。

四葉は好奇心の赴くまま(たぶんまだ発酵途中の)口噛み酒を舐め、千年も昔の宮水の巫女と「入れ替わり」を体験します。
これが、二つ目の秘密です。

口噛み酒を飲んで入れ替わりを体験すること、入れ替わりの際に組紐が伸びていく描写は、映画の中で瀧が御神体の祠で口噛み酒を飲んだときの描写と重なります。

四葉は遠い昔の先祖と入れ替わり、戻ってすぐに忘れてしまうのですが、宮水の血を思い起こさせる物語でした。

ちなみに発酵途中の口噛み酒はめちゃくちゃまずいようです。

第四話

民俗学者として大学で教授職についていた俊樹は、全国の倭文神(シトリノカミ)を祀る神社を調べて回っていました。

取材に訪れた最初の日、俊樹は一葉からぶっきらぼうにあしらわれますが、代わって話を聞いたのが二葉でした。

二葉は出会ったときから俊樹に対し、懐かしむような表情を浮かべており、二葉と俊樹の間にも「入れ替わり」があったか、または二葉が俊樹との出会いを予見していたことが伺えます。

教授の職も人間関係も、家も捨てて宮水に婿入りしたものの、二葉を神と崇める町の年寄りたちの姿を見て、複雑な思いを抱く俊樹。

やがて三葉と四葉が生まれますが、二葉は病に倒れ若くして亡くなってしまいます。

死に際、二葉は「あるべきようになる」「これが別れではない」と言い遺しますが、最愛のひとを失った俊樹の激しい悲しみはやがて糸守町の人々の信心と宮水神社への怒りとなっていきます。

宮水の持つ権力の名残を利用しつつ、宮水の力を弱らせるべく町長になり、一期4年を務め、時期の選挙の準備をしている、というのが映画での俊樹の状況でした。

一方、二葉と出会った日、二葉と俊樹が宮水神社の縁起について語り合うシーンがあります。

宮水神社の祭神・建葉槌命(タケハヅチノミコト)は、日本神話にて天津神が国津神を平定した際、最後まで抵抗した天星香背男(アメノカガセオ)を屈服させた神と言われています。

天星香背男(アメノカガセオ)は星の神とも言われていて、二葉は昔この町に災厄をもたらした天星香背男(アメノカガセオ)を、神社に伝わる組紐をもって絡め取ったのではないか、という仮説を語っています。

天星香背男(アメノカガセオ)は箒星、組紐は人々のネットワークの比喩ではないかという話を、俊樹と二葉は出会ったその日にしていたのですが、俊樹の頭は二葉を失った怒りと悲しみに覆われ、記憶に残る二葉の言葉を「宮水の妄言」と追いやっていました。

流星が落ちてくるその時に、糸守の町人に対し一番影響力がある存在になっていた自分に気付いた俊樹は、「あるべきようになる」という二葉の言葉の本当の意味を知ります。

そして「これが別れではない」と言った二葉その人の姿が、傷だらけ、泥だらけになった三葉の姿と重なります。

俊樹が二葉と出会わなければ俊樹は糸守町に留まることはなかったし、三葉も四葉も生まれてきませんでした。
二葉が死ななければ俊樹は町長になどならなかったでしょう。

ラストを読んだ時「うわ、そういうことだったんだ」と、ちょっとトリハダが立ちました。

おまけ・瀧くんの苦労いろいろ

華奢な体に戸惑う

健康な高校生男子である瀧の体と、華奢な女子校生である三葉の体では、線の細さや筋肉のつき方などが違いすぎて、うっかりすると転んだり怪我をしたりしてしまいそうだ、とかなり気を遣っていました。
しかしながら三葉の身体的特徴を掴み、うまく「操縦」しようと気持ちを切り替えるあたり、柔軟な瀧でした。

髪を結えない

三葉は身だしなみをきっちりと整え、外で誰からも後ろ指を差されないよう常に緊張して生活していたようです。
髪型は左右に三つ編みを作って、それを組紐で結い上げるという複雑なもので、おそらく瀧は見たこともない髪型だったろうと思います。

お風呂禁止、更衣室も禁止

体育の授業があるのに女子更衣室に入っちゃダメって…三葉もかなり無茶を言ってますね。
瀧は仕方なく、倉庫替わりになっている社会科準備室で着替え、ノーブラでバスケの試合をするという、女子高生にあるまじき更衣をやらかし、クラスの男子から注目されてしまいました。
女子更衣室に入っていれば誰かが気づいて注意してくれただろうにね…。

短いスカートなんて…!

三葉もサヤちんも、通常は制服のスカートを折って短くして穿いているようなのですが、瀧は「スカート穿いてる」だけで既に、股のあたりがスカスカして落ち着かないわけで。
この上更に短くとか!信じられない!って感じでした。
見る分には歓迎だけど、穿くのは無理!ということですね。

ブラジャーに悪戦苦闘

ブラの構造、主流は背中ホックですねん。
瀧くん、サヤちんに注意され、三葉にも怒られて、仕方なくブラに挑戦しますが、背中のホックが留められず悪戦苦闘。
テッシーから片手でホックを外す方法を伝授されるものの、結局うまく扱えずサヤちんに直してもらいます。

組紐は無理!

一葉おばあちゃんと四葉と一緒に組紐を編むのも巫女のお仕事…なのですが、そりゃ無理ですわね。
でも一葉おばあちゃんは三葉が夢を見ていることに気づいていて、様子がおかしいことに対しても、取り立てて騒いだり慌てたりはしないのでした。

まとめ

視点が切り替わると、登場人物の年齢性格に合わせて文体が変わるのは見事でした!
読みやすく、情景が浮かんできて、もう一度映画を見直したいと思いました。

個人的には、四葉が一葉おばあちゃんからムスビのことを教えてもらったり、祝詞を自分なりに解釈するときの、子どもらしい柔らかい感じ方の表現がとても好きです。

ぜひ一読してほしい作品です。

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最後まで読んでいただいてありがとうございました!

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