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「いつか来た道」ネタバレ・感想

      2016/09/09

第155回直木賞受賞作「海の見える理髪店」に収録されている「いつか来た道」のネタバレです。
「海の見える理髪店」に収録されている他の作品のネタバレはこちらから。

【目次】

ネタバレ

ひまわり

父が亡くなり一人暮らしをしている母が病気だから、と弟に勧められ、主人公の杏子は16年ぶりに実家の敷居をまたいだ。

画家を目指し挫折して、ほそぼそと絵画教室の先生をしていた母は、杏子と姉の蓉子にことさら厳しく、生活の隅々まで独自の美意識で縛り付けていた。

蓉子が事故死して以来、過度な期待は杏子一人に注がれたが、美大の受験に落ちたことをきっかけに母は杏子への興味を失った。

「自分の暮らしをきちんとできない人には、絵を描く資格も、生きていく資格もないの」

母から言われた言葉に、家を飛び出した後もずっと縛られ続けた杏子は、母から傷つけられることを恐れ、常に身構えていた。

ところがいざ実家へ戻ってみると、あちこちに異常があった。

庭は荒れ放題、台所にはカビのはえた紅茶、散らかり放題の母の部屋、歪んだ母の化粧。

乱れは、母が誰にも触らせなかったアトリエの、きちんと整えられた画材にまで及んでいた。

杏子は母が認知症であることに気付く。

厳しい母を前に身構え続けていた杏子だったが、病気になってようやく母の素顔を見て、わだかまりが解けていく。

絶対に言わないはずだった「また来るから」という言葉を残して、杏子は帰途についた。

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感想

白猫

駅から実家への道、家の中の様子など、色や香りが浮かぶ表現で思わずため息が出てしまいました。

作品に登場する母が「美しいものが好き」という設定で、娘である主人公の視線も、色や形を丁寧に追っています。

独自の美意識と価値観を娘たちに押し付けていた母の横暴さ、杏子の怯えと反発が描かれているのですが、杏子の言葉で表現されるほどには厳しくないように感じました。

好きな桃ひとつ買うのに、グラデーションが綺麗だったからと理由をつけたり、小さな猫と二人のときだけ表情が柔らかくなったりする母の意地っ張りな様子、またそれが子供にバレバレなところなどは笑えます。

母に傷つけられまいと身構えていた杏子の心が、母の認知症を知って柔らかくなる様子に温かさを感じました。

作中で子供の杏子の分身が登場するのですが、ぼんやりお庭や道端にいるだけなんですよね。
もう少し、大人の杏子と会話するとかしてくれても良かったかなと、ちょっと物足りない感じがしました。

■「海の見える理髪店」収録の他の短編
■第155回直木賞の候補作
■第154回の直木賞受賞作「つまをめとらば」のあらすじ・ネタバレ

最後まで読んでいただいてありがとうございました!

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