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「海の見える理髪店」ネタバレ・感想

      2016/09/09

第155回直木賞受賞作「海の見える理髪店」のネタバレです。
「海の見える理髪店」に収録されている他の作品のネタバレはこちらから。

本編ネタバレ

海岸沿い

主人公の「僕」はグラフィックデザイナーとして独立している。
あるとき、美容室ではなく床屋へ行くことにし、かつて大物俳優が通ったことで有名になった老主人の経営する床屋を探し当てて予約を入れる。

その床屋は海辺の小さな町にあり、看板もなくひっそりとしていた。
庭には古びたブランコが置かれており、ドアにかかった営業中の札がなければ入ろうとも思えないような店だった。

海の映る大きな鏡を見ながら、主人の熟練の手に頭を預け、その昔語りを聞く主人公。
普段はこんなにしゃべらないんですよ、と言う主人はしかし、戦時中のこと、画家になる夢を断念して祖父の代から続く床屋を継いだこと、結婚し、離婚し、店を大きくし、再婚…。

ふとしたはずみで雇っていた職人を殺してしまい、妻と子供を殺人者の妻子にするわけにはいかないと再度離婚し、以来ひとりだと語られる合間にも、長年鍛えられた理容師の手は35歳になる「僕」を赤子のように扱い、「僕」もまたその手に気持ちよく身を委ねる。

つむじの位置が独特であること、幼い頃に怪我をした痕が残っていることを指摘し、直接的な表現ではないが主人の子供と「僕」が同一人物であるとわかる。

「僕」は自分の結婚を前に、自分でこの小さな町の店を探し当て、予約をいれた。
結婚することを伝え、父である主人は心からおめでとうの言葉を贈る。

帰り際、主人は前髪の様子を確認したいからと口実をつけて、鏡越しでない息子の顔を改めて見直す。

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感想

夕日

情景描写がとても細やかで美しく、寂れた海辺の町の小さな床屋を見ているような気持ちになり、ともすれば潮の匂いすら感じるような気になります。

半世紀以上にわたる床屋の主人の人生が、静かに淡々と語られる合間に、床屋にしかない音やにおいなどの感覚がはさみこまれます。

理容師が行う作業のひとつひとつが丁寧に描写され、主人の物語と「僕」の時間が流れていく様子が重なりました。

最初は「僕」と主人の間柄が明かされておらず、「僕」もたまたま話題になってたから行ってみたのかな、程度に思わされるのですが、読後はしんみりと温かい気持ちになりました。

語りも上手いのですが、仕掛けが心憎い作品です。

あと、床屋=理容室に行ったことがない人はぜひ一度行ってみたらいいと思います。
お店にもよりますが、美容室とはいろいろ違って新鮮だと思います。

■「海の見える理髪店」収録の他の短編
■第155回直木賞の候補作
■前回の直木賞受賞作「つまをめとらば」のあらすじ・ネタバレ

最後まで読んでいただいてありがとうございました!

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