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芥川賞2015下半期の候補発表!第154回受賞作のあらすじと作者は?

      2016/09/09

第154回芥川賞候補作が発表されました。
文学なんて硬そう、と普段は敬遠していても、受賞する可能性がある作品となれば内容や作者が気になりますね。
候補作を読みつつ、作者についても少し調べてみました。

2016年1月19日 第154回芥川賞受賞作が決定!
『死んでいない者』(滝口悠生さん)
『異類婚姻譚』(本谷有希子さん)

 

『家へ』講談社

石田千(いしだ せん)1968年生 福島県出身
前回までに『あめりかむら』『きなりの雲』で芥川賞候補になっている作家さんです。

今作のあらすじ
東京の大学で彫刻を学んでいる、大学生の「シン」の物語です。
「シン」は両親が離婚し、母親と内縁の夫と共に、新潟の海辺の町で育ちましたが、実父とも親しくつきあっています。
それなりに穏やかに過ごしていた家族の中に、少しずつ違和感が生まれていく様子を描きます。
これまでの作品から、ごく普通に見える日常のひとつひとつを丁寧に描く作家さんだと思います。
福島県のご出身とのことで、東北の海辺の町の情景描写も楽しみですね。

『異郷の友人』新潮12月号

上田岳弘(うえだ たかひろ)1979年生 兵庫県出身
『私の恋人』で三島由紀夫賞受賞、これまでに『惑星』で芥川賞候補となっています。

今作のあらすじ
主人公の「僕」は輪廻転生して現在の体になるまでの記憶が全てあるという設定です。
これまでの作品『私の恋人』『太陽』『惑星』にも輪廻転生と記憶という設定が出て来ています。
今作中では、「僕」は同じ時代を生きている別人の意識を覗き見ることができるという特殊能力まで備えています。
芥川賞というと純文学ですが、こういう特殊な設定の作品が候補になることもあるのだなという新鮮な驚きがあります。
一般人から見るとこんな特殊な「僕」ですが、そんな中で人生をどう考えて生きているのか、とても気になります。

『シェア』文學界10月号

加藤秀行(かとう ひでゆき) 1983年生 千葉県出身
『サバイブ』で文學界新人賞を受賞されています。
芥川賞候補になるのは今作が初めてです。

今作のあらすじ
主人公は、立ち上げ時に自身もメンバーの一人だったベンチャー企業の、社長の妻だった女性です。
離婚し、その会社での仕事も辞め、年齢を重ねて老後の不安もある中、元夫の会社から引き抜いたブラジル人留学生のミーと一緒に、外国人旅行者に部屋を貸す「民泊」を始めます。
違法スレスレの綱渡りをしながら飄々としているミーの姿は眩しく描かれます。
若く能力もあるミーと自分を比べて不安になりながら、自分をつなぎとめようと動き続ける主人公の姿は痛々しくもしなやかです。

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『死んでいない者』文學界12月号

滝口悠生(たきぐち ゆうしょう) 1982年生 東京都出身
これまでに『愛と人生』で三島由紀夫賞候補、『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』で芥川賞候補になっています。

今作のあらすじ
作品はお葬式の場面から始まります。
故人の子や孫が集まって、式が終わり親族一同で食事をし、お風呂に入ってまた日常へ戻っていく、その一日を追いながら、親族それぞれの話がぽつりぽつりと出て来ます。
遠い近い親族が集まる機会など、結婚式か葬式くらい。けれども血縁の人というのは他人とは違ってどこか特別で、そこには今は死んでしまっていなくなった故人という結び目があるのだなと。
そんなことをしみじみ考えてしまう作品です。

『ホモサピエンスの瞬間』文學界10月号

松波太郎(まつなみ たろう) 1982年生 三重県出身
これまでに『よもぎ学園高等学校蹴球部』『LIFE』で芥川賞候補になっています。

今作のあらすじ
鍼灸師の語り手が施術をするシーンが主に描かれます。
文章は独特のリズムがあり、現実に目の前に起きていることなのか、主人公の妄想なのかが曖昧になるところも。
患者の体に触れながら相手の過去や感情に不思議にリンクしていきます。
五十山田(いかいだ)という仮名で描かれる患者は、戦争で心身に傷を負い、主人公は彼に関わる中で自身のバランスも不安定になっていきます。
私はこの作品を読んで、思考と身体とをつなぐ”橋”がうまく機能しなくなり本能のみになる、その瞬間のことをホモサピエンスの瞬間と表していると受け取りましたが、読む人によって解釈が全く変わりそうな、興味深い作品です。

『異類婚姻譚』講談社(2016/1)

本谷有希子(もとや ゆきこ) 1979年生 石川県出身
これまでに『生きてるだけで、愛』『あの子の考えることは変』『ぬるい毒』の3作で芥川賞候補になっています。

今作のあらすじ
「ある日、自分の顔が旦那の顔とそっくりになっていることに気が付いた」と始まります。
ちょっとカフカの『変身』を思い出します。
長年連れ添った夫婦に起こった、異常なはずの出来事、それが物語の中ではするりと受け入れられていってしまいます。
劇作家でもあるこの作家は、これまでにもかなり「変わった」作品を書いているようです。
どんなおかしな世界が展開されるのかは、読んでみてのお楽しみです。

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デスクランプと本
選考会は2016年1月19日に開かれる予定です。
どの作品もとても興味深く、今回手に取れなかった作品もぜひ読んでみたいと思いました。
発表後、単行本として店頭に並ぶのが楽しみですね。

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