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村上春樹の良さ・すごさは?苦手でも読める「ラオスにいったい何があるというんですか?」感想

      2017/02/16

2017年2月24日に最新作「騎士団長殺し」が発売される村上春樹さん。
ですが、世界中に熱烈なファンがいる一方で「なにが凄いのかわからない」「読みづらい」という人もいます。
「読めない」「わからない」派の私でも読めた作品の感想と、村上春樹さんの凄さについて調べたことを書いてみます。

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気になる村上春樹

世の中の人は総じて以下の二種類に分けられる。
すなわち、村上春樹を読める人と読めない人だ。

これは村上春樹を「読める人」である職場の先輩が言った言葉です。

実際のところ、私は村上春樹を「読めない人」です。
「1973年のピンボール」「IQ84」「ノルウェイの森」など、何冊か挑戦してみたことはあるのですが、なにしろ風景というか、見えるものの描写が細かくてまどろっこしい。

つい「そんなにも丁寧に周りを眺めてないで、話を先に進めてよ」
と言いたくなるのです。
私は「村上春樹と私の時間間隔は全然違うのだ」と決めて、それ以上先を読むのを一旦は諦めたのです。

…が、ノーベル文学賞の季節になると騒がれる「村上春樹受賞か!?」の声や、新作が出版されるたびに書店で大きく取り上げられるようすを見ると…。

やっぱり気になる!

村上春樹

 

見てください↑。

発売の10日以上前だというのに「騎士団長殺し」に関連して村上春樹コーナーができてるんです。
(TSUTAYA某店にて撮影)

村上春樹のどんなところがそんなに凄いのか?
ネットの声を参考に調べてみました。

村上春樹の凄さ

ノーベル文学賞に近い日本人作家

毎年10月頃、ノーベル文学賞の受賞者発表が近づくたびに、「今年こそは村上春樹が受賞するのでは?」と話題になっています。

なぜそんな話が出るのでしょう。

村上春樹さんの作品は、海外でも高い評価を受けており、外国人にも熱狂的な読者がいます。
作品内容として、主人公が先進国の若い世代に共通のライフスタイルであること、先進国でモラトリアムと呼ばれる世代に共通する状況を描いていることなどから、国境を超えて共感を生んでいるということが挙げられています。

また、独特の文体で描かれる描写は心情よりも風景や状況が多いため、外国語に翻訳しやすく、意味が損なわれにくいのも理由のようです。

世界的に多くのファンがいる日本人作家ということで、期待が集まっているのですね。

村上春樹の受賞歴

1979年、デビュー作「風の歌を聴け」で群像新人文学賞(小説部門)を受賞しています。
この賞は、2016年の芥川賞受賞作「コンビニ人間」の作者である村田沙耶香さんも受賞した賞です。

また、同年と翌年に短編作品で芥川賞候補となっています。

2009年に、イスラエルのエルサレムで開催されるブックフェアにて授与される「エルサレム賞」を受賞していますが、2017年までにこの賞を受賞した日本人は村上春樹さんのみです。

作風・特徴

読んでいない私が解説もなんなので、ここはYahoo知恵袋やhatenaでやりとりされていたご意見を参考にまとめてみました。

  • 登場人物のコミュニケーションが浅い(先進国の若者共通の悩み?)
  • 世の中と戦わない保守的・安全な道を選ぶ主人公
  • 言葉の表現、句読点などに工夫がある
  • 文章に透明感がある
  • 感情に訴えない文章が多い
  • 主人公に特別な特徴がないことが多く理解・共感しやすい

これらの特徴は、アンチ村上春樹派、ファン双方が認めるところのようです。
特徴には入れていませんが、短編の評価が高かったようです。

もしまだ読んだことがなくて、こういう雰囲気なら読んでみたいなと思う方は、短編から手に取ってみるのもありかと。

 

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「ラオスにいったい何があるというんですか?」感想

全く読む気はなかった村上春樹さんの作品ですが、少し前に「村上さんのところ」を書店で立ち読みして、村上春樹さんという人には興味が湧いていました。
そんなとき「ラオスにいったい何があるというんですか?」という長ったらしいタイトルのエッセイが出版されました。

今回の作品は小説じゃないらしい。
エッセイというか、紀行文というか、まあそれなら読めるかもしれないと思って手に取ってみました。
以下は「村上春樹読めない派」の私が読み通すことができた報告と感想です。

「ラオスにいったい何があるというんですか?」を開いてみると、これまで苦手だった描写のまどろっこしさが逆に味わい深く感じられました。

内容は、著者が取材旅行に訪れた、あるいは仕事で行った街のことを書いたエッセイ。
訪れた土地に住む人の暮らしや、そこでは日常的な、だけど旅人にとっては興味深い風景が、独特の描写で浮かび上がってきます。

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村上さんの見る風景

描かれている場所は、村上春樹さんがかつて暮らした町です。
アメリカ・ボストン、イタリア・ローマ、スペイン・トスカナ、フィンランド、そして取材や仕事で訪れたアイスランド、ラオス、九州(順不同)。

村上さんの行動は、どの町でもだいたい同じです。
おいしい魚料理を食べて、ワイン(またはビール)を飲んで、猫と遊んで、散歩して…。
いいですよね~お出かけ先の海外でこんなにもリラックスして過ごせるって。

そんな日常なのに、その土地その土地の空気感、人々、匂いがページに現れてきます。
港に打ち捨てられた古い船、掘っ建て小屋みたいな教会、壁の落書きでさえも、その土地の空気を吸い込んだ、その土地の一部になるんだな、と感じられます。
ボストンではジョギングコースを走り、ボストンマラソンに出場し、アイスランドではパフィンという個性的な鳥に心ときめかせながら。
静かに自分の視線を追って、その風景を丁寧に描写しています。
(小説ではこういう描写が「イーー!」ってなっちゃうのですが、エッセイだとするんと入るんですよ)

タイトルの「ラオスにいったい何があるというんですか?」という言葉は、村上さんがラオスに行く際に中継地点のハノイで現地のベトナム人に尋ねられた言葉だそうです。

「いい質問だけど答えられない。だってその”何か”を探しに行くんだから」

それが村上さんの答えでした。
そのラオスの旅を描いた中に以下のような一文があります。

「(日本で暮らしているとき)僕らはあまりきちんとものを見てはいなかったんだな」

曰く、流れる景色のように次々と巡ってくるものをただ目で追っているだけで、本当に自分が見たいものをじっくりと見てはいない、と。

自分が見たいものを意識し、自分の目と意思で見るという作業を、日常的に意識して行うことは少ないでしょう。
時間の流れの違う旅先だからこそ、そんなふうにものを見るのだ。
既成の情報でなく想像力を働かせて見るのだと、村上さんは言います。

本に描かれる空気や感覚や哲学は、その瞬間の「村上春樹」の感じた世界。
現地の時間の流れの中で意識してものごとを見ることができるとしたら、私にも、村上さんの辿った旅を、違った匂いを感じながら辿ることが出来るのではないかと考えさせられます。

そのような示唆を与えつつも、村上さんの文章は”お洒落”で”洗練され”て”都会的”です。
そして感傷的にも描かれる風景は読む側の好奇心を刺激するのです。

気さくな「村上さん」

文章を追いかけながら私は、好奇心を露わに落ち着きのない子供のように「次は何が見えるの?」とそわそわしてしまいました。

子供のようといえば、村上さんの人懐こさには脱帽です。
海外に作家の友達がいるし、中古LP屋やワイン醸造家やレストランのオーナーシェフや… いろんな国にいろんな友人がいて、文中にもたくさん登場します。
心なしか、登場する人たちは皆、古めかしいものや伝統や目に見えない心の部分を大切にしている人たちで、それは著者と通じるところなのかもしれません。

やたら人懐っこいおじさんが「僕はここが好きなんだよ」「あそこに行くならあの店オススメだよ」と無邪気に語りかけてくる、そんな本。

読み進めるうちに、きっと村上春樹という人が、「世界的に有名な大作家」から、行きつけの居酒屋でよくオーナーと喋ってる気のいいおじさんくらいに身近になりますよ。

「村上春樹を読めない派」の人で、「読めるようになりたいんだけどなあ」と思っている人は、このエッセイを手に取ってみて下さい。
以前よりちょっと、村上春樹「よめそうな人」になるんじゃないかと思います。

 

最後まで読んでいただいてありがとうございます(^^)

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